「どうだ、ノクタスちゃん、具合は?」
 病室に入ってきたバク次郎に、ノクタスちゃんは弱々しく微笑んだ。
「マシにはなったけど・・・本調子を取り戻すには時間がかかるわね・・・」
「そうか・・・」
「ディグダマンは?」
「今、昼食取りに行ってるよ」
 ベッドの隣の椅子に腰を下ろし、バク次郎は溜め息をつく。
「みんな、どうしてるっスかね・・・。ヒメヤさん達、ちゃんとクチバまでたどり着けたかどうか・・・サナさん達も心配だし」
 そう言うバク次郎の背中を、ノクタスちゃんはバシンと叩いた。
「いってぇ! 何するんっスか!? あんた体中トゲトゲしてるんだからむやみに叩くなっ!」
「悪い悪い。でも、あの子達なら心配要らないと思うわよ?」
「でも・・・・・・『ドリームメーカー』は、本当に怖くて強い組織。全員が無事とは、限らない――」
「信じてやろうじゃないの。全員が、無事だって。あの子達はかなり強いわよ。戦い慣れてはいないはずなのに、一生懸命頑張ってあんな強さを発揮してい る・・・信じてやる気にはなるでしょ?」
「・・・・・・そうっスね」



 
 死にたくないという思いと、ゼロを倒さなければという思いと、神 田を解放してやりたいという思い。
 RXとファビオラは、ゼロを倒そうと燃えていた。
「食らえ! 『かえんぐるま』!」
 RXが十八番の技を繰り出すが、ボーマンダのゼロには効果はいまひとつ、ダメージはほとんど与えられない。
「ふん、お前らの力はこの程度か!?」
「くそう! 神田さんさえ元に戻れば、なんとかゼロに五人で対抗できるのに・・・!」
 一方、神田を押さえている浅目と瑞はというと・・・。
「『でんこうせっか』!!」
 瑞が、神田にフルスピードで『でんこうせっか』を繰り出す。
 だが、神田はやはりびくともしない。瑞の『くろいまなざし』で見えるようになった本体を攻撃しているにも関わらず・・・だ。
「はぁ、はぁ・・・」
「瑞さん、大丈夫?」
 ゴルダックが相手なのでフシギソウに『へんしん』している浅目が問う。
「何とか・・・」
 全速力で走って乱れた息を整えながら、瑞は浅目を見た。
「・・・ゼロが・・・あの亡霊達を、倒してしまったって事は・・・この世界で死んでしまったって、事・・・?」
「そうじゃないか?」
「じゃあ・・・この世界での死って、どういう事だろう? ゼロに倒される、って事?」
「さあ。それは私にも分からな―――っ!!」
 神田が飛び込んできて、浅目は会話を中断する。
「『みずでっぽう』!!」
 かわしきれなかったが、RXのように炎タイプではなかったので、効果はまあまあ。浅目にいたっては、効果はいまひとつだ。
「はははははは!!」
 と、ゼロの笑い声が響いた。その声に反応し、瑞は思わず後ろを振り向く。
 RXとファビオラは諦めずにゼロに向かってゆくが、ゼロの優勢は見た目にも明らかだった。
「所詮、『ドリームメーカー』にたてつくような身の程知らずの力はこんなものか! そんなザマではこの俺の足元にも及ばぬ!」
「ちくしょう・・・!」
「RXさん、落ち着くのです。確かにゼロは強いですが・・・その攻撃力だって、体力だって、無尽蔵ではありません。それに・・・」
 ファビオラは、RXを見てちらりと笑う。
「私(わたくし)達には、彼には負けないものがありますわ。絶対に、負けないものが。それが何だか、お分かりでしょう?」
「ああ」
 RXは力強く頷くと、ゼロに『かえんぐるま』で飛び掛った!
「ふん、お前らが俺に勝てる要素など一つもない! それに、俺の力が尽きる前にお前らの負けは決定する、残念だったな!」
 ゼロはRXを迎え撃とうと、『ドラゴンクロー』の構えを見せる。
 二人の力がぶつかり合った!
 最初はゼロが優勢にも思えた・・・が、徐々にゼロは押されだす。
「な・・・何故だ!?」
「分かんねーかな、俺達がお前に負けないもの!」
「ふん、そんなものはない、と――」
「それは、勝利に対する執念だ」
「・・・!?」
「俺達は、絶対に負けられないんだ。全員が、本当に消えてしまわないようにする為に・・・。俺達はそれぞれが、悠さん達も神田さんも含めたみんなを お前から守る為に戦ってる。だから・・・」
 RXの力は、遂にゼロの『ドラゴンクロー』を押し返した!
「だから、勝利への執念はお前には負けないんだ、仲間を守ることを知らないお前には!!」
「ぐぅっ・・・!!」
 RXの勢いに押され、空中でよろめいたゼロへ、ファビオラが突っ込んでいく。
「くらいなさい、『りゅうのいぶき』!!」
「チッ・・・『まもる』!」
 ゼロはギリギリ『まもる』を発動、すんでのところでファビオラの攻撃を回避した。
「――瑞さん、ぼーっとしてると次のが来る!」
「『みだれひっかき』!」
 神田が次々と繰り出す鋭い爪の攻撃を敏捷な動きでかわし、瑞は浅目の傍に立った。
「ねえ、浅目さん。ゼロさえ倒せば、神田さんは止められると思う?」
「分からない・・・だが、今は取り敢えず神田さんを倒して、目を覚まさせなければ・・・」
 だが、もしその為には、まずゼロを倒さなければならないとしたら・・・?
 浅目は、ゼロの方を見た。
 ファビオラは、確かにゼロに有利なドラゴンタイプだ。しかし裏を返せば、ゼロもまた、ファビオラに有利なドラゴンタイプなのだ。
 RXは炎タイプ、ゼロにはあまり強力なダメージは与えられない。
 ―――しかし、自分ならどうだ?
「・・・瑞さん、一つお願いがある」
「ん?」
「しばらく、一人で神田さんを見ててほしい。その間に、私がゼロを何とかする」
「・・・・・・そうか、浅目さんなら・・・!」
「でも、正直、一人であの人に立ち向かうのは、かなり危ないと思う。もし瑞さんが神田さんにやられたら、その場でそのまま消えてしまう可能性も―――」
「大丈夫、私は死なない」
 瑞ははっきりとそう言い切り、浅目を見た。強い意志と、信頼感の宿った目で。
「こんなとこじゃ死なないよ・・・と言っても、もう死んじゃってるけどね」
 ふと、いつだったかグラエナが言った台詞が浮かんだ。
 『絶対追いつくから! 私、こんなとこで死なないからっ! ・・・一人でも、たくさん残ってた方がいいでしょ!!』
 何となく、あの時の由衣の気持ちが分かる気がした。
 だが、一つだけ彼女とは違う所がある。
 一人でもたくさんじゃない、全員で生き残るんだ!
「――分かった、頼んだぞ」
 浅目は瑞に頷き返すと、RX達の方へ走った。
「あれ、浅目さん! 瑞さんは――」
「神田さんを足止めするために頑張ってくれてる、でもそんなに時間はない!」
「・・・ふん、どう悪あがきしようが同じだよ!」
 ゼロが『ドラゴンクロー』を放った、その瞬間だった。
 浅目の姿は溶け出し、一瞬でフシギソウからオニゴーリに変わったのだ。
「な、そんなに早く『へんしん』が――」
「『ふぶき』!」
「ぐわぁぁ!」
 ドラゴン・飛行タイプのボーマンダには威力四倍、効果は抜群だ!
 ゼロはあっという間に氷漬けになり、墜落した。かなり大きなダメージを与えられたはずだ。
「浅目さん、サンキュ! 今がチャンスだな!」
 RXが攻撃をしようとした―――その瞬間。

 バキンっ!!

 氷が音を立てて崩れ、ゼロが立ち上がった!
「なっ・・・!?」
「あいにくだが・・・氷を使い慣れてない奴の貧弱な氷など、俺の力の前では無力に等しい!」
 そう言って、不敵に笑うゼロ。
「――強い・・・」
 知らず、浅目は呟いていた。
「・・・このままじゃ勝てるわけないよな・・・仕方ない、諦めるか・・・」
「そんな事は・・・!」
 焦ったようにRXを見るファビオラに、RXは笑って見せた。
「なんてな。ちゃんと策は考えた」
 RXは、ゼロを見る。
「この世界をなくすか・・・誰かが特攻隊として奴に突っ込み、犠牲になるか・・・」
 極論、奥の手だ。
「・・・・・・仕方ありませんわね・・・他の世界からここへ無理矢理連れてこられたあなた方を、犠牲にするわけには参りません。私が―――」
 そう言ったファビオラは、しかし次の瞬間、凍りついたように動かなくなった。
「なっ・・・『かなしばり』!?」
 浅目は振り返る。
 そこには、ボロボロになってもまだ戦う、悲痛なまでの神田の姿が、そして、体の自由を『かなしばり』によって封じられた瑞の姿が・・・。
「瑞さん!!」
「・・・ごめんなさい、みんな・・・」
 ぎしぎしと音がしそうなほど懸命に体を動かそうとするが、その場から一歩も踏み出せない瑞とファビオラ。
「ふはははは、良くやったぞ神田!」
「やっぱり、か」
 RXは、高笑いするゼロへ一歩踏み出した。
「俺しか、いないよな?」
「RXさん!」
「俺には、全てのポケモンに有効なダークエネルギーがある。それを使いまくれば、たとえゼロだって・・・!」
 RXの瞳には、ダークポケモンの暗い光が宿りだす。
 彼の強さと、哀しみを表すような色。
「じゃ・・・俺、行くから」
 RXはそう言うと、走り出した。
「あ・・・浅目さん・・・!」
 搾り出すような瑞の声よりも早く、速く、浅目はウインディに『へんしん』して、RXを追いかける。
「無茶はするな、RXさん!」
 RXは何も言わず、浅目に『スピードスター』を浴びせかけた!
「くっ・・・!」
 反射的に避け、浅目はバランスを崩してよろめいてしまった。その大柄な体が、神田の攻撃の射程内にはいる。
 すかさず、神田は『かなしばり』を発動、浅目もその場から離れられなくなってしまった。
「そのほうがありがたいや、サンキュー神田さん!」
 RXは、ゼロの目の前で止まった。
「よぉ、ゼロ!」
「ふん・・・お前一人に何が出来るものか!」
「・・・やっぱ迫力あるな・・・そんな厳つい(いかつい)目で睨まれると怖いから、やる事やらせてもらうぜ!」
「相変わらず減らず口を・・・『ドラゴンクロー』!!」
 RXに『ドラゴンクロー』を叩き込むために低空飛行に入ったゼロの背中に、RXは思い切りジャンプして飛び乗った!
「貴様! 何を――」
 ゼロはRXを振り落とそうとするが、RXはしっかりゼロの羽根の付け目にしがみ付いて離れない。
 その体勢のまま、彼は『ダークエンド』を放った!
「ぐぁっ!!」
「『ダークエンド』、『ダークエンド』、『ダークエンド』!!」
 可能な限り『ダークエンド』を乱発するRX。
 先程の『ふぶき』のダメージもたたってか、ゼロは段々とふらふらし始めた。
 ・・・・・・しかし、RXの限界はゼロよりも早かった。
 反動のダメージを受け続けた彼は、遂に、振り落とされてしまったのだ。
「ぐぅっ・・・!」
「悪あがきも、ここでおしまいだな・・・死ね! 『つばめがえし』!」
 『つばめがえし』は確実に当たる技・・・ゼロは、確実にRXをしとめようとしているのだ。
 RXは、観念したのか下を向いていた。
 ――だが、攻撃が当たる寸前、RXはきっと顔を上げた。
「この距離なら、腹部に――急所に当たる! 『ダークエンド』!」

 爆発が、起こった。
 その爆発に、二人とも巻き込まれる。

 ―――煙が晴れたとき、ゼロもRXも、そこにはいなかった。
「RXさん・・・」
 『かなしばり』が、解けた。
 ゼロがいなくなったためか、神田は倒れていた。





 悠達突入部隊は、四階で機械に惑わされはしたものの、その後八階までは順 調に上がっていった。
 いずれの階も、『ポケモン不思議のダンジョン』といっても差支えがない、複雑に入り組んだものだった上に、ライフルを構えたアサナンがあちこちから現れ て襲い掛かってきたのだが。
 そして、五人が九階に上がる階段を見つけたその時、上のほうから、見るからに紫色をした薄気味悪い空気が流れ込んできた。
「な、何だ!?」
 階段を上りかけていた悠が慌てて降り、少し震えながら言う。
「上の階はどうやら、強烈な『どくガス』がたちこめているようだ・・・生き物が棲めるような空間ではないな。いや、これでは通る事さえ出来ないだろう」
「前はこんなんじゃなかったんだけど・・・おかしいなぁ」
 内部に詳しいワタッコとあかつきさえ、首をかしげている。一同がそこで足止めを食らい戸惑っているところに、ヒメヤが考え込みながら言った。
「さすがに室内じゃ『ふきとばし』を使うわけにもいきませんしね・・・何か、手はないでしょうか?」
 確かにそうだ。もし室内で『ふきとばし』なんて使ってしまったが最後、空気が拡散してこの『どくガス』が建物全体に広がってしまうだろう。そうなると、 七十二階など夢のまた夢で終わってしまう。
 すると、ガムが腑に落ちない様子で言った。
「おかしいと思いません? 今まで、アサナンが銃を構えて襲ってきてたのにいきなりこれですよ。こんな低フロアで、どうしてもう特定のポケモンしか通れな いような仕掛けが・・・?」
 一同ははっとしたように、上の階を見上げた。
 進んだとはいえ、未だ彼らのいるのは八階だ。エレベーターはごく限られたものだけ使うのだと考えれば、おのずと答えは絞られる。
 すなわち、これは建物にある仕掛けなどではなく、『上の階には[どくガス]を得意技とするポケモンがいる』か、『悠達を足止めするための真っ赤な偽物』 か・・・。
 ヒメヤが皆に意見を訊こうとしたその時、
「絶対真っ赤な偽物だって!」
 と言いながら、モモンスカーフを付けたあかつきと、特性『こんじょう』を持ったワタッコが飛び出し、上の階へと駆けて行った。
 百パーセント嘘だとは思っていないのが丸出しである。
「ま、まぁ、適度に用心する事は悪い事じゃないと思いますよ・・・」
 ガムが二体を誰にともなく何とか弁護しようとしていると、上の階から二人の歓声が聞こえた。
「『どくガス』じゃ、なかったらしいですね・・・」
「僕らの取り越し苦労って事か。じゃ、ヒメヤさん、ガムさん、僕らも行きましょうか」
 そう言って残りの三人も、霧が広がる九階へ上がっていった。

  



「RXさーんっ! どこーっ!?」
 自由になった三人は、RXの姿を探す。
 自分を犠牲にして、ゼロと戦ったRXを・・・。
「ゼロは、死んだのでしょうか・・・?」
 ファビオラが呟いた。
 ゼロの姿は、跡形もなくなっている。・・・RXと、一緒に。
「どこーっ!? RX!!!」
 瑞は、必死になってRXを探した。
 ・・・と。
「うー・・・・」
 今までゼロに操られていた操り人形、神田泉子が目覚めた。
「は・・・っ! 貴様ら、何奴!?」
 ゼロによって記憶を消されているのか、状況が理解できない神田。
 浅目が、神田に近付く。
「神田さん・・・・・・今までの事、覚えてないのか?」
「今までのこと・・・? ・・・ここは、どこだ・・・?」
「神田さん!!」
 その神田に、瑞が詰め寄った。
「RXは、どこに行ったの!? あんたとゼロの所為なのに・・・なのに忘れたりして・・・! ゼロの馬鹿ーっ!!」
 最後はほとんど愚痴のようになりながらも、不満をぶつける瑞。
 その瞳は、僅かにぬれていた。
 ―――その瞬間。
 神田の周りを、光が包んだ。
「・・・!?」
「え・・・?」
 その光は霧散し、神田の姿は消えていた。
 その代わりそこに立っていたのは、ボロボロのRX。
「RXさん!」
「・・・あれ? 俺・・・」
「生きてたんだ・・・・・・! 良かった・・・」
 瑞は、あの時のポロックの欠片を差し出した。
「ほら、これで元気出して・・・」
 そう言いながら、瑞はぽろぽろと涙をこぼす。
 どう考えても、元気出す必要があるのは瑞の方だ。
「瑞さん・・・」
 そんな瑞の体を、ファビオラはその羽根で優しく撫でた。





「でさぁ、誰か秋葉さんとひこさんの居場所知らんか?」
 この世界であきはばらとひこを探すという、良く考えなくても無謀な課題を出された澪亮達探索部隊。
 取り敢えず澪亮は皆に質問するが、
「そんなん知らんに決まってるやん、知らんから探しに行くんやろ?」
 223があっさり切り捨てる。
「だよなぁ・・・。ったく、あいつら年下から順番に置いて行ったに違いない! 俺達だけでどうしろって言うんだよーっ!!」
 逆切れし、海に向かって叫ぶ澪亮。
 確かに、探索部隊最年長の由衣と、突入部隊最年少の悠が同年齢なのだ、そんな気がしなくもない。
 が・・・どう考えても、澪亮に年齢は関係ない、彼女一人で百人力だ。いや、百人力では足りないかも知れない・・・。
「澪亮さん、今は兎に角ひこさん達を探しましょう、ね?」
 愛がなだめ、澪亮はしぶしぶながらも納得した。
「あきはばらさ〜ん、ひこさ〜ん!」
「いるなら返事してや〜!」
「どこですか〜っ!?」
 三人は必死に探し始めるのに、
「実は敵にやられてたりして・・・」
 澪亮はぼそっと呟いた。
「不吉な事言わないで下さいよ、澪亮さん・・・」
 優しげ――というかむしろ、問題児を抱える母のような目つきでゴーストを見るサーナイト。
「だってよぉ、『ドリームメーカー』はかなりの強敵だぜ? あのRXさんや、『ドラゴン四天王』本人ですら敵わなかったかなりの兵(つわもの)だ。そいつ らと、明らかに戦い慣れしてないひこさんや戦いたがんない秋葉さんが戦ってみろ、勝敗なんて歴然なんてもんじゃねぇ」
「でも・・・私は、二人とも生きてるって信じたいです」
 愛はそう言って、にっこり笑った。
「まぁ・・・あの秋葉さんに限って、負ける事はないだろうがな」
 ――そんな事を話しながら、一行は海沿いに島を歩いてあきはばらとひこを探した。
「―――でも、情報もなしに動くのって・・・何だか無駄な気がするわ・・・まぁ仕方ないんだけど」
「由衣ちゃん言うようになったやん!」
「・・・・・・それはどうも・・・誉め言葉として受け取っておくわ」
 何故ちゃん付けなのかは、あえて突っ込まないことにした。
「あの秋葉さんが負けるはずないから、生きてると思うんだけどな〜」
「大丈夫、生きてますって。・・・きっと」
(『きっと』ぉっ!?)
 『みらいよち』をやってのけた愛がそんな不確かな言葉を使うと不安になってしまう。223と由衣は、知らず知らず顔を見合わせた。
 やがて、一行はグレンじまの港へと辿りついた。
 そこから先は崖になっており、進む事は不可能だった。
「取り敢えず、ここには二人ともいねぇようだな・・・」
「先には進めませんね・・・戻りますか?」
「でも戻ったって同じところに出るだけよ」
「うぅん・・・どないする?」
 見事に口調の違う四人が額を寄せ合って相談する。
「船を使おうにも・・・もう出航してしもたしなぁ・・・」
「戻ってくるのを待ってたら、文字通り日が暮れるわ」
 ふと、澪亮が顔を上げた。愛を見て言う。
「なぁ愛さん。あんさんサーナイトだから『テレポート』使えるんじゃ?」
 日ごろ、意見を出さない、言わない、考えないの三拍子そろった澪亮の案は、そこそこ悪いものとは思えなかった。ただ・・・、
「確かに使えますけど・・・ダメです。どこにたどり着くか分かりませんし」
 この難点を除けば。いつだったか成功したのは、本当に偶然に過ぎない。
「変なところに着いちゃって迷ったら、澪亮さん責任取ってくれるかしら」
「ヤダね」
「でも、そんなん言ったら日ぃ暮れるまで待たなあかんし・・・」
 海の向こうに目をやる223。
「おい、お前ら何者だ!?」
 ・・・と、聞き覚えのない声が・・・。
 見ると、塔の方からアサナンが四体、手に銃器を携えてこっちに向かって走ってくる。
「うわ・・・ほんとに格闘タイプ好きよね、『ドリームメーカー』って・・・私苦手なのに・・・」
「おまけに何か持ってやがるよ・・・ヒメヤさんじゃねぇんだから」
 ぼそっと由衣と澪亮が呟く。
「そ、そんな事言ってる場合じゃないですよ、見つかっちゃったじゃないですか!」
「まぁ、俺があんな大声出してたんじゃあ当然だよな」
「平然と言うな! どないすんねん!」
 澪亮は、考える素振りすら見せずにアサナン達を睨みつけた。
「まぁ、敵は格闘タイプ持ってるから愛さんと223さんのロゼリア、エスパータイプ持ってるから由衣さん、それに両方に強い俺・・・総動員でどうだ!」
「どうだっていうか、私らには選択権ないのよね・・・異存は、ないけど」
「よっしゃ、いくでロゼリア!」
「分かりました、頑張ります!」



 九階に上った悠、ガム、ヒメヤは、先に上ったあかつきとワ タッコの姿を探す。
 しかし・・・二人の姿は、霧に邪魔されている所為か見えなかった。
 ――そして、奥から聞こえた、聞き覚えのない声。
 低くて邪悪な意志に満ちた、声。
「フッ、所詮この程度か。裏切り者には制裁を与えねばな。死ね!!」
 その裏切り者というのは・・・ファビオラ軍中隊長、あかつきの事だ!
「そこにいるのは誰だ!?」
 ガムを先頭に、三人は部屋の奥へと走っていく。
「おや、これはこれは。まだお仲間がいたようですね」
 そこに立っていたのは、ヌオーとアリアドスだった。
 ―――そのギャップに、悠達は思わず爆笑してしまった。
「みんな油断しちゃダメだ! 見た目は確かにこんな奴らだけど、この二人のダブルバト・・・うぅっ!!」
「ピキ ピリリ ピピ(見た目は余計だ)!!」
 爆笑を止めようとしたあかつきに、アリアドスは容赦なく『いとをはく』を使い、口と四本足を縛り上げてしまう。
 どうやらこのアリアドス、独自の言語パターンを所持しているらしい。
「やめろ! よくもあかつきさんとワタッコさんを・・・!」
「怒りに身を任せた攻撃を、私達が食らうとでも? 『どろかけ』!」
 ヌオーに『でんこうせっか』を繰り出したガムはしかし、逆にヌオーの攻撃を急所に食らってしまう。効果は抜群、その上技の命中率まで下げられた。
「折角、この塔の守りをくぐり抜けてこんなところまで来てくださったお客様です、自己紹介をしておきましょう。私はダーク・ムゲンです。そして、こちらは 相方のダーク・コゲン。まあ、この『ダーク』というのは、私達に与えられた称号のようなものですが。仲良くしましょうね」
 ダーク・ムゲンは表情を変えずに、声だけで友好的に挨拶をする。
 しかしそのポーカーフェイスからは、負ける気などないといわんばかりの殺気が漂っていた。
 三人はその殺気を感じ、うかつに飛び掛れずに硬直した。
 両者とも、紫に着色された霧の部屋で、直立したまま動かない。
 しかし―――痺れを切らしたヒメヤが、ダーク・ムゲンに『リーフブレード』を仕掛けた!
「覚悟!」
 草タイプの技は、命中すれば威力は四倍になる! ―――筈だった。
 突然、何かがカメラのフラッシュのように一瞬光った。悠とガムは思わず眼を閉じる。
 二人が目を開けたとき、そこにいたのは――ボロボロになった、ヒメヤだった。
 何が起こったのか全くわからずに眼をぱちくりさせる二人だが、すぐにヒメヤに駆け寄った。
「ヒメヤさん、大丈夫ですか!? 一体何が・・・!!」
「わ、分かりません・・・ただ、何かとてつもなく大きい閃光に襲われて・・・」
 そのヒメヤの様子を見て、ダーク・ムゲンは声だけで不敵に笑う。顔が全く笑っていないのが更に怖い。
「どうしました? 早く残りの人たちもかかってきなさい」
「ピリリ ピキ キキリ ピリキキピ(八つ裂きにしてくれるわ)!」
 突然のヒメヤの瀕死に動揺するガムたちは迂闊に手を出せず、相手の出方をじっと待つしかなかった。
 ダーク・ムゲンは、やれやれといった感じで首を振った。
「仕方ありませんね、それならこちらから行きますよ。『じしん』!!」
 炎タイプの二人には辛い地面攻撃最大の技、『じしん』をダーク・ムゲンが仕掛けてきた。
「うわぁぁぁぁっ!!」
 『じしん』が直撃し、二人は床に倒れてしまう。
 間髪をいれず、もう一度『じしん』を仕掛けようとするダーク・ムゲン。
「あっけないですね・・・これで終わりですか!」
 その時、何者かの『つばめがえし』がダーク・ムゲンにクリーンヒットした!
 ――ワタッコだ。
「ワタッコさん! 良かった、生きてたんですね!!」
「こんなところでくたばるわけには、いかないからな」
 ワタッコは、悠とガムを見て言った。
「こいつらの戦術が分かった。どうやら、この霧は『くろいきり』と『しろいきり』を混ぜ合わせ、『あやしいひかり』で着色したもの・・・視界を狭くして、 あいつらに有利な状況を作るためのものらしい。そして、こんなものまで見つけたぞ」
 ワタッコは、翼の間からミラーボールのようなものを取り出した。
「これと空気中の水分を使い、光を乱反射させていたんだ!! 霧の濃さは、おそらくムゲンが調節している・・・」
「じゃ、じゃあ、ヒメヤさんが倒れたのは・・・ダーク・コゲンの『シグナルビーム』を食らったからか・・・!」
 ガムは、倒れたままのヒメヤを見た。
 乱反射した、効果抜群の『シグナルビーム』・・・それを食らったら・・・。
「それだけじゃない、コゲンが使用できる光技は他にも『あやしいひかり』、『ソーラービーム』、『フラッシュ』、それに精神攻撃の『ナイトヘッド』もこの 状 況で使われるとマズイ!! どうやら、このミラーボールは複数あるようだ・・・俺も視界が悪くてこれしか見つけられなかった・・・」
「どうしたらいいんですか・・・!?」
「くっ・・・」
 悠は、ダーク・ムゲンとダーク・コゲンを見た。
 ダーク・ムゲンの愉快そうな声。
「そうですか・・・仕掛けがバレましたか。しかし、それが分かったところで今更どうにも出来ません。さぁ、みんな揃ってあの世に送ってやりましょう!!」




 アサナン達は、塔を背にして澪亮達の前に立った。
「ここまでやって来るとは・・・何者だ!?」
「何者って・・・俺は仙崎澪亮だ、知らんのか!?」
 その名前を聞いて、アサナン達は僅かにひるむ。
「センザキ・レイスケ・・・まさか、あのハインツ様を破ったあいつだと・・・!!」
「え、もしかして俺って有名人なわけ?」
「『知らんのか』って言っといてその反応はないでしょ澪亮さん・・・」
 一方のアサナンは、銃をこちらに向けたまま、こそこそと相談し始めた。
「まずいぞ・・・相手が悪すぎる・・・」
「ここは一旦・・・」
 だがその時、また別の声が聞こえた。
「ひるむな、撃て!!」
 アサナン達の後ろにいつの間にか立っていたのは、スリーパーだった。
「あ、まさかいつだかの・・・!」
「くそ、何でこうもしつっこい奴らが多いんだよ、俺らの敵は!」
 『うひょひょ、結構早くばれるものですねぇ』―――間違いない、初日に出てきて、かなりあっけなく浅目に倒されたあのスリーパーだ。
 223と由衣は彼の事を知らない、こいつを倒した後にこの世界に来たのだから。
「何・・・知り合いなんか?」
「知ってるだけだ! いつだか浅目さんに倒された弱っちいスリーパー!」
「うひょひょ、あれから経験値も溜めてレベルアップしたのですよぉ。もう、あのときのように倒されはしません!」
「その通りさ!」
 その隣に立つのは・・・ルンパッパ。こいつもかなりあっけなくヒメヤに倒された覚えが・・・。
「お前達は、今度こそここで死ぬんだよ★」
 語尾の星が黒くなっている。
「おいおい、いい加減にしろよ・・・こんなところで懐かしのキャラと再会してる暇は――」
「さぁ、撃て撃て!」
 ルンパッパの声で、もうアサナン達はひるまなかった。
 澪亮達に向かって、銃を乱射したのだ!
「うわっ・・・くそ、何しやがる!」
「『サイコキネシス』!」
 愛が『サイコキネシス』を発動、ギリギリで弾の軌道を逸らした。
「やはり、銃器は効きませんか・・・アサナン!」
 その瞬間、アサナン達は武器を捨て、ものすごいスピードで飛び掛ってきた。
 澪亮と愛に『シャドーボール』、ロゼリアに『サイコキネシス』、由衣に『きあいパンチ』を繰り出そうとしている・・・!
「ふふふ、こいつらはね、かなりの量の技が使えるんだよ★ スピードもパワーもある、お前らなんかには負けないのさ!」
「うひょひょ、やっておしまいなさい!」
 ―――にやり、と澪亮は笑った。
「確かにスピードはあるけど・・・パワーじゃ俺には勝てないぞ! 『あやしいひかり』!」
 不思議な色合いの光が、アサナンの周りをぐるぐる回るぐるぐる回る・・・・・・。
 あっという間にアサナンは混乱した。そのまま、自分自身に『シャドーボール』を放ってかなり遠くへ飛ばされる。
 一方の愛を攻撃したアサナンは・・・突然どこかから飛んできた攻撃に、体勢を崩して倒れてしまった。
「『みらいよち』は、元々少し先の相手の位置を予測し、そこに攻撃を飛ばす技・・・ですよ。油断しましたね!」
 さっき『サイコキネシス』を使った直後に、『みらいよち』を発動した愛の姿があった。
 ロゼリアの前には、由衣が立ちはだかる。
「『サイコキネシス』・・・強力な技だけど、悪タイプの私の前では無力よ!」
 間を空けずに、『きあいパンチ』を放つアサナンを睨んだ。
(反撃を許さないスピードで攻撃すれば、『きあいパンチ』の集中力が途切れる事はない、わね・・・でも―――)
 文字通り、睨みつける。低くうなり声を上げ、怒気のこもった瞳で。
「『こわいかお』!!」
 がくん・・・とスピードが下がったアサナンに、すかさずロゼリアが花びらを向ける。
「『マジカルリーフ』や!」
 集中力の途切れたアサナンと、先程の『サイコキネシス』に失敗したアサナン、二体ともが『マジカルリーフ』でダウンしてしまった。
 澪亮と、愛と、223と、由衣。四人は、無傷のままそこに立っている。
「無様に負けたくなきゃ、さっさと撤退しろよ」
「そんな事するはずがないだろう? さっきも言ったはずさ、今度こそお前らはここで死ぬんだと!」
 ルンパッパがそう言うと同時に、雨が降り始めた。



「みんな揃ってあの世に送ってやりましょう!」
 その言葉が消えぬ内に、ダーク・ムゲンとダーク・コゲンは霧の中に消えた。
「どこだ!どこにいるんだ!?」
 動揺しながらも、部屋を見渡す悠とガム。
 二人は動かない。敵からも攻撃してこない。こう着状態のまま、時間だけが過ぎていく。
 どうやら敵は、ヒメヤのように、こちらが痺れを切らして襲ってくるのを待っているようだ。
「ワタッコさん!」
 ――と、ヒメヤがよろよろと立ち上がり、ワタッコを呼んだ。
「ヒメヤさん、意識が・・・!」
「ええ、一応さっきから気が付いてはいました・・・話も大体聞きましたよ。ワタッコさん」
「どうした?」
「そのミラーボールを貸してください!」
 ヒメヤの突然の申し出に、ワタッコは首をかしげる。
「何故だ? 何か策でも・・・」
「いいから早く!!」
 ヒメヤはせかすようにワタッコに呼びかける。
「・・・分かった」
 その有無を言わさぬ口調に気おされたように、ワタッコはヒメヤにミラーボールを渡した。
 ヒメヤはそれを受け取ると、持っているM4カービンの銃口をミラーボールに向けた。
「さあ・・・・・・姿を現せ!!」

 ヒメヤは、銃身の横についているフラッシュライトのスイッチを入れた。
 まばゆい光が、霧を染めていく・・・。

「あっ!!」
 あかつきの驚きの声。
 そこには、見事なまでに完璧に写された、ダーク・ムゲンとダーク・コゲンの影が。
「ミラーボールと霧で光技を乱反射させる・・・いいアイデアだ。けど、それを逆手に取られると・・・こうなるのさ!」
 ヒメヤはM4カービンをフルオート発射モードにし、影に向かって乱射した!
「ぐわああっ!」
「キイイイイッ!」
 二体の悲鳴が聞こえる。
 ヒメヤがつけてきた百発マガジンも、わずか七秒ほどで空になった。
「あ、霧が・・・・・・」
 悠が呟いた。
 霧が、晴れていく・・・。
 そしてそこには、血を流して倒れているダーク・ムゲンとダーク・コゲンの姿があった。
「よかった・・・フラッシュライト付けてきて・・・」
「ありがとうございます、ヒメヤさん!」
 ワタッコはあかつきの傍へ行き、彼を縛る糸を切ろうと努力している。
 彼の元へ駆け寄ろうとした悠達に、ダーク・ムゲンの弱々しい声が聞こえた。
「ふ・・・ふふ・・・私達を倒すとは、なかなかのものですね・・・。どうせ『フラッシュ』など覚えていないだろうと思って・・・油断してましたよ」
「お前のごたくなんか、聞くつもりはないよ」
 悠はダーク・ムゲンの言葉を突っ返す。
 そんな彼に、ダーク・ムゲンは笑い声を上げた。
「強いですね、あなた方は・・・気に入りましたよ・・・・・・。折角だから・・・教えてあげましょうか・・・あなた方――この世界にいる あなた方が、何なのかを・・・」
「ふぇ!? ふぁあふぃふぁふぇふぇふふぇ!(え!? じゃあ聞かせてくれ!)」
 ダーク・ムゲンが突然言った言葉に、あかつきが糸で縛られた口で答えた。
 この世界にいる自分。その正体が分かれば、この世界から出る事に繋がるかもしれない。
「くくく・・・最初に訊きましょうか・・・ワカシャモさん、名前は?」
「悠、だ」
「・・・やはり即答しましたね、その名前を・・・。悠さん、あなたの本名は・・・なんですか?」
「何言ってるんだ! 僕の本名は・・・・・・・・・」
 悠はそこまで言ったが、何故かその後言葉に詰まった。
「本名は・・・あれ?なんで思い出せないんだ!?」
「・・・思い出せるはずがないでしょう。あなたは『ポケ書』の《なんでもおはなし板》の住人、悠であり、悠ではないのですから・・・・・・」
「ど、どういう事だ!!」
 ガムが叫ぶ。
「あなた達は自分の事を、悠、ガム、あかつき!、ヒメヤMkU量産型、ワタッコHB体というHNの人間だと思っているのでしょう・・・」
 知ってるのなら訊くなHNを、と悠は突っ込みたかったのだが、何しろ元の世界に戻るきっかけが掴めるかも知れない大事な場面だと口をつぐむ。
「――ですが、正確には違います。正確には・・・あなた達はその人間達の分身とでも言うべきですかね・・・・・・もっと正確にいえば、本当のあなた方の肉 体はまだ・・・・・・あなた方のパソコンの中で、存在しています」
 そこでダーク・ムゲンは一度むせ、血を吐いた。
 もう、彼には時間が残されていない。
「しかし、『本当のあなた方』は・・・そこから一切、動いていません。あなた方は・・・・・・この世界に『本当のあなた方』が入る時に、生み出され た・・・・・・『本当のあなた方』の思考どおりに動く、言ってみれば・・・トレーナーが捕まえて自分のものとした『ポケモン』と同じ・・・生きた操り人形 なのですよ・・・・・・」
「そ・・・そんな! じゃあ僕は悠なのか? それとも悠じゃないのか!?」
 悠が大声で叫んだ。
「本当のあなたは・・・・・・あなたのパソコンの中に、いますよ・・・。そして・・・あなたはその『本当のあなた』によって・・・・・・思ったとおりに動 かせる・・・。だから、『どちらともいえない』というのが妥当でしょうか・・・。あなた方が思った事は・・・・・・例え現実には出来ない事でも、出来るよ うになります・・・例えば技を使ったり・・・ですね。ヒメヤさんだって・・・本当は運動神経も鈍くて・・・銃を扱ったことも一度もないのに・・・・・・本 物のジュプトルのように素早く動き、平気で銃を使っているでしょう?」
「確かに・・・そうだ・・・・・・」
 ヒメヤが言う。ダーク・ムゲンがそんな事まで知っているのは、恐らくファビオラと同じ理由なのだろう・・・。
「ですが・・・・・・インターネットの中の・・・この世界であなた方に、必要のない思考・・・・・・明かしてはいけない『本名』などは・・・たとえ『本当 のあなた方』が、言おうと思ったと、しても・・・・・・分身である、『あなた方』には届かないのですよ・・・・・・」
 段々と息切れしてきたのか、読点の数が増えていく。
 「あなた方の、仲間にはもう、死んだ者達がいますね・・・。しかし、あなた方が、ここで死んだとしても、『本当のあなた方』は、死にはしませ ん・・・分身 が、死んだだけなのですからね。今頃・・・この世界で死んだ、あなた方の仲間達も・・・・・・こことは違う、どこかの精神世界に存在しているでしょう ね・・・・・・・・・・・・」
 ダーク・ムゲンの隣に、いつの間にかダーク・コゲンが歩いてきていた。
「コゲン・・・・・・お別れですね・・・」
「ピキリリ・・・・・・ピリリ・・・ピキキリリ、ピキリ・・・・・・」
「・・・ムゲン、コゲンは今・・・何て言ったんだ?」
 ガムの問いに、ムゲンはポーカーフェイスを崩し、口の端で笑ってみせた。
「ご想像にお任せします・・・・・・。本当の意味を知っているのは・・・・・・私だけに、しておかないと・・・・・・寡黙で、冷酷なコゲンの名に・・・キ ズが付きますからね・・・・・・」
 ダーク・ムゲンは、最期にそう言って息絶えた。
「そ・・・そんな・・・じゃあ僕は何なんだ・・・・・・『本当の僕』はどこにいるんだ・・・・・・だったら何故ここに僕はいるんだあっ!!」
 悠の悲痛な叫びが、ビルの中にこだまする・・・・・・。




「『あまごい』か・・・へっ、あん時と同じじゃねーか」
「おんなじなようで、おんなじじゃない!」
 そう言うとルンパッパは、その大きな身体からは考えられないスピードで、四人に迫ってきた!
「速い・・・!」
「これは・・・特性『すいすい』!?」
「その通りさ!」
「『あやしいひかり』!」
 澪亮は『あやしいひかり』を放つ、しかし・・・。
「あれ・・・効かない!?」
「うひょひょ、当然です。もう私の『しんぴのまもり』が発動していますからね、味方は特殊状態にはなりません!」
 そう言って笑うスリーパー。
 ルンパッパは、四人の丁度真ん中に来ると、地面に手を当てた。
「ネイチャーパワーを食らえ、『しぜんのちから』!」
 ここは砂浜のフィールド。『しぜんのちから』は・・・・・・『じしん』になる!
「きゃぁぁぁっ!!」
 がくっと倒れ掛かった皆の背後で、波がどんどん高くなっていく。
「地震の後は、津波に注意しないとね★ 『なみのり』!!」
 海から直接湧き上がった巨大な波は、雨で更に威力を増して四人に襲い掛かった!
「今度こそおしまい―――!!?」
 いつの間にか、ルンパッパの目の前に、澪亮がいた。
「まさか、あの『しぜんのちから』を食らってまだ・・・!?」
「特性対決といこうか。俺の特性は『ふゆう』、地面の技は効かないのさ!」
 澪亮は二体に『ナイトヘッド』を叩き込む!
「ぐわっ・・・!」
「ちっ・・・そう上手くはいかせませんよ、眠ってしまいなさい、『さいみんじゅつ』!」
 スリーパーの『さいみんじゅつ』が澪亮に放たれ・・・
「言わなかったかしら、私にエスパー技は効かないと!」
「そして、私の特性は『トレース』・・・あなたの『ふみん』、コピーさせてもらいましたよ!」
 由衣と愛にはじき返された。
「お前達は『しぜんのちから』を食らったはず、何故そんなに動ける!?」
「特性対決・・・面白い事言うわね、澪亮さん。私の特性は『いかく』。あんたは自覚してないでしょうけど、あの『しぜんのちから』の威力は弱まってたの よ!」
「そしてあの『なみのり』は、水の技が効果がいまひとつな俺のロゼリアが受けた」
 223がそのすぐ後ろにいる。
 雨は段々と小降りになり、やがて止んだ。陽光が、地上に降り注ぐ。
「もう一度だ! 『あまご――」
「またやんのか? お前は、そういう風に自分らに有利な環境を作らねぇと俺らに勝てないって思ってるって事か? 臆病なんだな、あのカイリューと同じ か!」
 澪亮の――『ちょうはつ』、だ。
「くそ、もう怒ったぞ! 僕の最大の技受けてみろ! 『ハイドロポンプ』!!」
 ルンパッパはまんまと『ちょうはつ』に乗り、澪亮達に『ハイドロポンプ』を放った!
「今日は元々天気が良かったよな・・・って事は、水の技はあんまり効果はない」
「そして最後に、俺のロゼリアの特性は『ようりょくそ』や!」
 『ハイドロポンプ』が澪亮達に届くよりも早く、ロゼリアがルンパッパとスリーパーの前に立つ。
「『ソーラービーム』!!」
「ぐぎゃぁぁぁ!!!」
 叫び声を上げ、スリーパーとルンパッパはアサナン達を巻き込んで塔の方へと飛ばされていった。
「よっしゃぁ! やるじゃん俺達!」
「チームプレイって素敵ね、私達もやれば出来るじゃない!」
 澪亮と由衣は快哉を上げ、愛と223はハイタッチ。
「いやー、それにしてもなかなか面白い戦いだったな」
「あんな感じで全員の特性が生かせたのは良かったですよね」
「さ、じゃあ、ひこさん達を探しに行きましょうか」
「・・・・・・どこを探すんや?」
「――あ゛・・・・・・」





 ダーク・ムゲンの息絶える間際に言い残した言葉に当惑する悠に、ガムが話 しかけた。
「悠さん・・・あいつの言った事も気になります、でも今は先に進まないと・・・」
「そんな事言ったって! 今ここにいる僕は僕じゃないかもしれないんですよ!!」
 悠は悲痛な表情で訴えるが、ガムは難解な問題を解いて、一つの答えが導き出せたような表情で話し始めた。
「たしかにムゲンの言った言葉が本当なら、ここにいる僕達は架空の存在なのかもしれない・・・『本当の僕達』が諦めたら僕達はこの戦いをおりる事が出来る のかもしれない。でも――」
 悠がその言葉に一瞬ビクッとしたが、ガムは話を続ける。
「今、この世界が滅びていこうとしている事に変わりはないんですよ・・・!」
 ガムの声が次第に強くなっていく。
「僕はこの世界を救いたい。いや、僕達が救わなくちゃいけないんです!!」
 どんな因果があったって、何が理由であったって、この世界に迷い込み、ここまで戦ってきた自分達が。
「キキキ!!」
「うわ!?」
 話に気をとられていた皆にダーク・コゲンが『いとをはく』を繰り出してきた!
「うわ!」
「ぐぅぅっ!」
 悠を除く全員がその攻撃を避けきる事が出来ずに手足を縛られてしまう。
「キキ・・・リキキ・・・ピキ・・・ピリキキキ・・・ピキキ キキキキ(ムゲンを倒して・・・い・・・いい気になるな・・・お前ら全員道連れだ)!」
 ダーク・コゲンは半死半生ながらも最後の力を振り絞り、縛り上げた全員を『サイコキネシス』で一網打尽にする構えでいる!
「悠さん! あなたがコゲンを倒すんです!」
 ガムが縛られた状態ながらも悠に向かって叫んだ。
「・・・」
 悠は沈黙している。まだ動揺が収まらず、迷っているのだ。
 しかしその動揺も、迷いも、ガムの一言で吹き飛んだ。
「ここで諦めたら、この世界はどうなるんですかっ!?」
「!」
 そうだ。もし自分が今ここで諦めたら、他の皆はどうなるんだ?
 このフロアにいる皆は、バラバラに別れたままの皆は、そしてこの世界の住人達は―――。
 このまま、全員が『ドリームメーカー』にやられてしまってもいいのか?
「良くない・・・・・・絶対に、だ!」
 悠は全速力でダーク・コゲンに向かっていく。
「ピキキキ(邪魔するな)!」
 ダーク・コゲンは悠に『ナイトヘッド』を仕掛けた!
「ぐっ!」
 しかし・・・
「ピ、ピキリ(バ、バカな)!?」
 悠はその攻撃に持ちこたえた。そして・・・
「うわぁぁぁぁぁーーっ!!」
 耳を劈き(つんざき)、天上まで震わせるような叫び声を上げ、『ほのおのうず』と『スカイアッパー』を同時に繰り出した!
 四階で拾った『れんけつばこ』でワザのれんけつを行っていたのだ。
「『火の玉スカイアッパー』!!」
「キキーー!!」
 悠がコゲンにとどめをさすと、皆を縛っていた糸も自然にほどけた。
「悠さん・・・!」
 あかつきが、先程とは打って変わった悠の態度、そしてその戦いぶりに驚いて、思わず声を掛けた。
「もう迷わない・・・この世界を救うため、今はそれだけのために戦います!」
 悠は吹っ切れたような顔をしている。
 その表情に安堵の息をついてから、ガムは皆に話し出した。
「みなさん、ダーク・ムゲンの言葉で思い出した、一つだけはっきりしている事があるんですが」
 ガムが自分の言おうとしている事を再確認して、そして口を開いた。
「僕は誰かに呼ばれてこの世界に来たような気がするんです」
「えぇ!?」
 さすがに、四人はその言葉に驚いた。今頃になっての話なのでそのインパクトも大きかったのだ。
「ちょうど少年のような・・・そう、ヒメヤさんに似たような声で」
「ぼ、僕に!?」
 ヒメヤもそれが聞き間違いなのではないか、という表情で、ガムを凝視した。




 閉鎖された空間に、こつ、こつ、こつと足音が響く。
 時折、天井を伝った水が落ち、ぴちょんとはねる音がこだまする。
 そして、二人分の息遣い。
 あとは何も聞こえない、薄暗い鍾乳洞。
 あきはばらとひこは、ふたごじまの地下通路を通っていた。
 先程まで敵のポケモンと戦っていたのだが、全員を倒したので今は静かになっている。勿論、次にいつ襲ってくるかは分からないのだが・・・。
 ――ちなみに、この『全員を倒した』というのは百パーセントひこの功績だ。あきはばらはというと、戦いに全く参加してくれないのだ。
 まあ、ひこに有利な相手ではあったからかなり楽勝していたのだが。
(それにしても・・・・・・静か・・・)
 ここに来るまで、十数分おきに敵は襲ってきていた。なのに、もう前に敵を倒してからずいぶんと経つ。
「何ででしょうね・・・」
「ん? 何がですか、ひこさん?」
「いえ、静かになったなと思って・・・」
「それは私も考えていました」
 歩きながら、あきはばらは淡々と続ける。
「考えられる可能性としてはまず、もう出口が近い事。出口にもきっと見張りはいますからね、もう通路内に手下を置く必要はなくなりますよ。それから、『ド リームメーカー』が、自分達の力を過信しているか、私達を甘く見ているかのどちらかという事。ふたごじまからここまで、辿り着けるはずがないと思ってい る。ただ・・・この線はなさそうですね、これだとグレンじまからふたごじままで行く事を考えていない事になります。それに、今までずいぶん強力なポケモン を差し向けてきたのですから、中心部に近いところでそんなに守りを手薄にするはずがない」
 こういう風に考えるのが得意なんだろうなと思いつつ、ひこはあきはばらの話に耳を傾けた。
「後は・・・そうですね、ここに置ける手下の数があれくらいしかなかったという事。私達の所為で部下をかなり失いましたからね、『ドリームメーカー』は。 それから最後に、最悪のシナリオとして――」
「さ、最悪のシナリオって・・・それ最初に言って下さいよ!」
「ああ、すいません。・・・・・それで、最後に考えられるのは・・・罠(トラップ)の存在です」
「トラップ・・・」
「つまり、味方が引っかかると不味いような罠がこの辺りに仕掛けられているという事・・・」
 ひこは、立ち止まろうとする。この先に進むと危険だと、分かったのだ。
 しかし・・・・・・立ち止まろうとしたその最後の一歩が、引っかかった。
「きゃぁっ!?」
「これは・・・テレポートトラップ・・・」
 二人の姿は段々ゆがんで行き、そして消えた。
 ――天井を伝った水が、音を立てて床の水溜りへ同化する。
 洞窟からは、もうそれ以外の音は何も響いてこなかった。




 取り敢えずガムが呼ばれた声の謎は保留するとして、悠達突入部隊は一路十 階へと向かった。
「良く来たな、お前達!!」
 そう言って待ち構えていたのはアーボ、アーボック、ウツドン、ウツボットだった。が――
「『スカイアッパー』!」
「『リーフブレード』!」
「『かえんほうしゃ』!」
「『ゴッドバード』!」
「『しんそく』発動!」
 五人の息の合った先制攻撃に、
「ぎゃぁぁ!!」
 十階の敵は全員吹き飛ばされた!
(こ・・・こんなに強いなんて計算にないぞ・・・)
 仲間の結束がよりいっそう固くなったと同時に一気に強くなった、とガムは思う。
 そう思いつつも、お気に入りの名言を心につぶやきながら十一階へと走っていた。
(この世界は滅んだりしない。絶対に・・・!)




 どこへ行けばいいのか分からず、その場に止まったままの探索部隊。
 遂に、澪亮は折れた。
「あ〜もう、分かった分かった! 俺が浮遊の力を使って適当に運んで殺るよ!」
「――何や? それは誤字か? 誤りなんか?」
 223のツッコミには答えず、澪亮は三人に手を向けた。不思議な光が皆を包み、一行はゆっくりと上昇を始める。
「じゃあ、まずは近くのふたごじままで――澪亮さん、お願いしてもいいかしら?」
「宜しくお願いします」
「よっしゃあ、行くぜ! 野郎共!」
 いつのまにやらすっかりノリノリの澪亮。
「・・・野郎は俺だけなんやけどな」



 

 一方、精神世界では皆がRXが戻ってきたことに安堵していた。
 だが、RXはさっと辺りを見回し、そして言う。
「みんな気をつけて! ゼロはまだ倒れていない!」
「なんですって!?」
 ファビオラは『もしや・・・』と思った。
「チッ、神田め・・・あと一歩という所で裏切ったな・・・」
 ゼロが暗闇から再び姿を現す。
「ゼロ! じゃあさっき倒したのは!?」
 瑞が目を疑うようにボーマンダのゼロを見た。
「ククク・・・言っただろう? 『無駄な事』だ、と・・・。この空間は俺の独壇場だ。俺は俺が殺した何百もの霊魂を糧(かて)に出来る。お前達が攻撃して も、俺は殺した霊を『みがわり』にするだけだ。お 前達は俺にダメージを与えることは出来ない」
 ゼロは不敵な笑みを浮かべていた。
 ファビオラが、叫ぶ。
「あなたという人は・・・! 何の罪のない人達を殺した後にまで、まだそのような仕打ちを・・・!!」
 ファビオラの激怒も無理はない、もう一度この世界で死ぬと魂そのものが引き裂かれ、完全な『無』となってしまうのだ。
 それに対してゼロは当たり前のように答える。
「戦争でもいちいち女、子供をよけて爆弾を落としているわけでもあるまい? それと同じだ」
 そしてゼロは、苦悶の表情を浮かべている無数の霊魂のうち一つを捕まえると、ファビオラ達にまるで見せつけるかのように踏みつぶした!
「!!」
 RXはそれを見て、遂に怒りを抑えきれなくなった。
「思い上がるのもいい加減にしろ!!」
 RXはダークエネルギーを思い切り開放すると、ゼロに『ダークダウン』を仕掛ける!
「む!?」
 しかし、ゼロはたやすくその技を避ける。
「それなら・・・みなさん耳をおふさぎなさい!」
 ファビオラはゼロに『ほろびのうた』をかけた。ダメージを与えられないなら特殊効果で倒そうとする戦法だ。が・・・
「その程度のワザで何ができる!?」
 ゼロはその歌声を簡単に掻き消すかのように『ほえる』を使う。
「きゃぁっ!」
 ファビオラはひるんでしまった・・・。



・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−
ぱんぱかぱぁん!(何
ついにドリメが10章到達です! 記念すべき記録であります!
・・・・・・なーんて一人ではしゃいでてすいません、由衣です。
今回ははしゃぎすぎが影響したのか、かなりオリジナルな要素詰め込みすぎた気がします・・・・・・;;
えぇと、参加者の方々は分かると思いますが、澪亮達が再登場なスリーパー&ルンパッパと戦うシーン、本当はありませんでした・・・。あとは、バク次郎達の 描写およびあきはばら&ひこが罠に引っかかった細かい経緯も原版にはなかったわけです;; 書き始めたらいつもの悪い癖でついつい調子に乗ってしまっ た・・・・・・そして途中から、「私だって元を質せば物書き、小説付け加えて何が悪い」と自己完結させました(死
えぇと、特性対決っていうのはこういうのあったら面白いなーとちょっと思ってた事だったんです。別に特性でなくても良かったのですが、全員の特長を生かし て戦うっていうバトルをいっぺん書きたかったんですよ。アサナン達との戦いでそれやらそうと思って書いてたら、いつの間にやら余計なんが約二名ほど現れま して・・・気付いたら特性対決始まってました(待
あとは、ふたごじまの地下通路での出来事も、「こうだった」と書かれていたのに具体的な描写入れましたが・・・なんだかモココさんがますますライチュウさ んに振り回されてますね・・・・・・(汗
それと言い残した事・・・・・・そうだ、ダークペアの会話増やしました(ダークペアって何
ムゲンとコゲンは、お互いを「相方」だと思ってたわけですよね。つまりは信頼関係が結べていた。それも、光技を見越して霧の濃さを操るなど、半端でなく強 い信頼関係が。言ってみれば心の会話、パートナーとまもn(強制終了
だからやっぱり、二人とも死んじゃうんだったら別れの言葉がほしかったんです・・・。そう考えると、『ドリームメーカー』に加担さえしてなけりゃいい奴ら だったのかもと思えてきて・・・。あの、叫び声以外で唯一吹き替え音声でお送りしていない(つまりかっこでくくった翻訳がない)台詞は私が加えました。意 味は教えませんよ(ぇ
・・・・・・・・・編集者にあるまじき事に、私この先の展開はほとんど読んでいないのです・・・・・・。なので、このまま進むとこの先のストーリーに不都 合があるのに気付いたりした方はお気軽に声掛けてください。

ちなみに、『しぜんのちから』が砂浜で『じしん』になるのは実地調査に基づくので間違いないです!


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