『お前は強いな』
 突如聞こえたその言葉に、少女は驚いて目を見開いたまま固まってしまった。
「……ま、まさか、今のはお前が……しゃべったのか……!?」
『的確な判断力も、相手の弱点を見抜く洞察力も、ポケモンについての知識も持っている。ただ――足りないのだ』
 彼は、少女の側のポケモンを指し示すように、頭を軽く振った。
『そのポケモン……私の熱で、体が乾きかけている。水ポケモンなのだから、乾燥は命に関わることくらいお前なら分かるだろうに。これ以上戦いを続ければ、そいつは――』
「うるさいっ! ポケモンに情けをかけてやる必要が、どこにあるんだ!?」
 少女は、真っ直ぐ彼を睨みつけた。
 冷たい瞳――触れると火傷を負いそうなくらい、冷たい氷の色。
「ポケモンは己が強くなるためにトレーナーを利用すればいいし、トレーナーは目的達成の為にポケモンを利用すればいい。それだけだろ? その関係に、そんな甘っちょろい感情は入る余地なんてないんだっ!」
『……』
「そして、あたしの目的は――お前の捕獲(ゲット)だ、ホウオウ!」
 彼――ホウオウは、何も言わずに少女を見ていた。
 怒っているとも、哀しそうとも取れる目で、少女を見つめていた。
 やがて、ホウオウはその大きな翼を振りかざす。
『……お前に、チャンスをやる。お前に足りないものは何なのか、気付けるか――?』


 そのポケモンは、眩い光にあっという間に視覚を奪われた。
 そして、弱って朦朧とする意識の中に届いた――主の、悲鳴。
『このトレーナーのポケモンは、皆解放するとしよう……。お前も、野生に戻るが良い』
 その声も段々遠のいていき―――




 気が付いたら――





 ここにいた。




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